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呑切り(のみきり) その2

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日本酒の貯蔵タンク側面の底の方には、中に入っている液を取り出すための口(呑穴)がある。「呑切り」とは、それを開けて(切って)日本酒を取り出し、利き酒することから、そのように呼ばれるようになったという。

特に気温が上昇して腐敗などの恐れがある6〜7月に行われる最初の呑切りは「初呑切り」と呼ばれていた。最近では温度管理がしっかりしているため、そのような恐れは少ないが、これまでの貯蔵状態が適正であったかを判断し、これからの温度管理などに生かしていく重要な行事であることに間違いない。

開会宣言などなく唐突に始まったこの日の呑切り。
たまにボソボソとつぶやき合う会話以外は、「ジュルジュルジュル」もしくは「キュッキュッキュッ」など、舌の上で酒を転がす音だけが利き酒室に響く。本数が本数だけに、もうただひたすら利いていくしかない。

利いていく順序は、タンク貯蔵されたランクの低い酒から瓶詰め保存されている吟醸系の高級酒へと続く。

ちなみに高級酒は瓶詰め保存することで、タンク保存よりもきめの細かい管理ができ、ダメージが少ないきれいな状態のままで熟成することができるらしい。特に吟醸系は熟成香が少ない方が良しとされている。

で、そもそも「熟成」とはなんなのよ? という今さら聞くにはちょっと勇気がいる疑問を杜氏にぶつけてみた。

熟成を科学的に説明するとなると、私のオツムでは厳しいものがあるので、当日現場で聞いた話だけで説明したい。

できたばかりの酒は、水とアルコールの粒子が大きい状態で、まだ完全に混ざり合っていない。そのためそれを口にすると味が荒く感じる。熟成が進むとその粒子が小さくなりよく混ざり合う。そのためまろやかさが増すというわけだ。

熟成には温度が重要な関わりがあるそうで、低温の状態にしておくと、ゆっくり混ざり合いきれいな状態で熟成する。つまり若い酒でもまろやかに感じる酒が出来上がるというわけだ。以上! ざっくりと熟成について。


呑切りを行う蔵関係者の手には評価表があり、3点満点で評価を加算していく。その評価表は最終的に醸造部長の玉木さんの手に渡り、今後の業務計画の資料としていく。

社長・竹村さんから高評価を得たのは普通酒「土佐司牡丹・生貯蔵酒」。普通酒といえどもフルーティな香りと、バランスの良い味が評価の対象となったようだ。その意見には杜氏以下も同意見の様子。今年はこの酒、イチオシです。普通酒だけにコストパフォーマンスは抜群です。

さて、社長らが事務所の廊下に並んだ焼酎の方へ向かったのをいいことに、私も少しだけ呑切りさせていただくことに。

「タンクによって味の違いがあるかもよ」と杜氏。それを受けて私は舌に全神経を集中させて、隣り合う二つの酒を利く。
「たしかに、隣り合ったタンクでも少しだけ風味に違いがあるような・・・」と杜氏へ告げると、「俺にはその違いは分からないけどね」。アタタ。

現在、蔵では厳しい温度管理のもとで酒は貯蔵されている。二つの貯蔵タンクの酒が全く同じ条件の場合、ほとんどそれらに違いが生まれることはない。
なんのことはない、杜氏の刷り込みに私の舌がいとも簡単に反応してしまっただけ。私の味覚に成長の兆しは見えないようだ。。。「呑切り」終わり。
by tosanosaketsukuri | 2009-10-27 17:15 | 酒造り
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