米作りは大まかな流れの約束事はあっても、人によって作業の方法や時間がまちまちで、共通のマニュアルというものがない。 「ばらまき」と呼ばれる苗作り&田植え方法も、一般に思い描いているそれらとは、少し違った方法のひとつ。 田んぼの様子を撮し終えた私は、イノシシ本部長こと猪野さんがそのばらまきを夕方からやるというので、同氏の十二才能の田んぼで待機していた。 「ばらまき」とは、その名のごとく種籾をそのまま水を張った田んぼにばらまく方法。 乱暴な方法に聞こえるこのばらまき。けれどもそれも農業の担い手不足や米価の低迷などによって、効率化を求められる農家のひとつの知恵だ。かえってこれのほうが、より自然に近い米作りなのかもしれない。 この日は陽の高いうちからばらまきを見せてもらう予定だったが、思いのほか風が強く、種籾があらぬ方向へ飛んでいく危険性があったため、風がおさまるのを待つことになった。 猪野さんの予想通り夕方5時くらいには、風がおさまった。 まず猪野さんは自らの山からとってきた3〜4mほどの竹を、ご自慢のビンテージトラクターの後部に繋ぎ、田んぼの中をぐるぐると回る。竹は田んぼの表層をなでていき、泥が舞い上がっていく。こうすることで土と種籾が混ざりやすくなるという。 田んぼの泥を十分に浮かせたところで、5日間水に浸けておいた種籾を、農薬などを散布する際に使用する動力散布機に投入。それを担いだ猪野さんは、最初は畦から田んぼの周辺部へ向かってばらまく。続いて裸足になって田んぼの中に入り、畦からは届かない中心部にばらまく。 はたしてこれで、まんべんなく田んぼに種籾がばらまかれるのか。「それは経験よ。意外とうまくいくもんさ」と、胸を張る猪野さん。 猪野さんがばらまいていく田んぼの上には、雨が降った時のような水紋が広がっていく。少し傾き始めた日が照らす田んぼには、散布機のブーンという音と同氏が足を進めるごとに聞こえてくるちゃぷちゃぷという音だけが響く。夕方の田んぼの作業はどことなくのんびりとしている。 この日ばらまいたのは約10キロの種籾。順調にいけば、は3〜4日後には芽が伸びてくる予定だ。
by tosanosaketsukuri
| 2009-09-04 22:28
| 米作り
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